うつ病
先日、よみっこさんの記事の中でうつ病だったとことを告白した。
そこで自分の中で整理、確認、区切りを付けるためにもあのときのことを書いておこうと思った。
ただし、今うつ病に悩んでいる方には参考になるかもしれないので読んでみてほしいが、今命にかかわる病気や大変なことと必死に戦っている方には申し訳なく、不快に思う方もいると思うのでそのような方には読まないでいただきたい。
始まりは、高校を卒業して大学進学のために浪人していたときだった。
日本人の書いたわかりやすい哲学書をきっかけに哲学の世界に惹かれていった僕は、浪人生という孤独な環境もあってだんだんとネガティブな思考に陥った。
生きることは辛く苦しいだけなのに無意味。
自分は醜く、ただ恥をさらして摩耗していくマイナスだけの人生。
死んだら跡形もなくなり何もなかったことと同じ。無。ゼロ。
チャンピオンになることも無意味。
全て無意味。なのに苦しい。
人の目が苦しい。
人の目を気にしているから心から楽しめない。
この先楽しいことは何もなく苦しいことだけ。
なのに20年生きても80年生きても同じ。
もし自分が死んだら家族や周りの人は悲しむ。
でもみんなもいつか死に、全ては無かったことになる。
ただ苦しいのに意味はない。
それを早く終わらせたい。
そんな思いがグルグル回った。
そして本当に死のうと思うと最後のところでやっぱり怖かったし母親の悲しむ顔が浮かんだ。
精神科に通ってうつ病と診断されて、薬を飲んで治療を行ったり、それでも良くならなかったので精神病院に入院する。
病院で規則正しい生活をすると前向きになって精力的に動き出す。
しかし寒い季節になってくると、ふとしたきっかけでその思考に陥って引きこもる。
そしてしばらく休息して暖かくなると冬眠から目覚めた熊のように元気に動き出す。
4年ほどそれを繰り返した。
ときには専門学校に行ってみたり、ときにはバイトをしながらジムに通ったり。
キックボクシングを辞めようと思って2年ほど離れた時期もあった。
でもやはり自分にはキックボクシングしかないと思った。
そのときに勇気をもらったのが、映画、北野武監督「キッズリターン」だった。
主人公のボクサーは結局挫折してしまうんだけど、ボロボロになりながら生きるボクサーは美しいと思った。
負け犬でもやり続けることで美しくなれると思った。
そうしてキックの道に戻ってくるも、試合が決まった後にうつの症状が出てきてしまうこともあった。
そのときは大変だった。
練習どころではない。
試合が近づくに連れて死にたい気持ちが増す。
怪我も重なって直前まで練習などほとんどしてない。
でも試合をキャンセルしたいなんて言えない。
どうしようどうしよう。
逃げ出したい。
死ぬしかない。けど死ねない。
そうこうしているうちに当日を迎える。
ジムの皆には平生を装っていたが内心は今すぐ後楽園ホールを飛び出して逃げ出したかった。
直前になって覚悟を決め、
「今日は華々しく散ろう」
そう思ってリングに上がった。
相手選手を見ると顔に恐怖が見えた。
行けるかもしれない、と思った。
ゴングと同時に「自分なんて死んじまえ」と半ばヤケになりながら相手に畳み掛ける。
後のことなど考えない。
どうしょうもない自分への怒りを拳に込めた。
結果1ラウンド1分KO勝ち。
試合後はぐったり、喜ぶこともなく、そのまま冬眠する。
でもこの頃になるとわかってくる。
寝れば治る。
また春に復活。
バイトしながら練習に励む。
ここに来てやっと学習する。
あいつは冬にまたやってくる。
もうあいつには負けない。
カウンセラーにも通って相談し、冬に備えた。
寒くなるときは頑張りすぎず心の健康をキープする。
何年かぶりに冬を乗り切る。
それ以来あいつに陥ることはなくなった。
でもあいつがいなくなったわけじゃない。
むしろ今もあいつは毎日のように顔を出している。
でも一瞬だけ。
例えば、練習が終わって布団につく時、どうせいつか死ぬのにこんなきつい練習してなにになる?と。
けどその後に、「まっいっか」ってなる。
苦しいことかかってこいや。
生きてて苦しいことばっかだけど、苦しいことも楽しむ。
上手くいかなくて当たり前と思う。
上手くいってても今はラッキーなだけと思う。
苦しくても逃げないようになった。
自分のことも世界のことも知らなかった。
人の目を気にして、こうでなければばならないと思っていた。
でも他人は自分が思うほど自分のことを気にしていない。
なんでもありなんだ。
人の目からだんだん解放された。
自転車でラーメン屋に行くたびに、もしかしたら今日轢かれて死ぬかもしれないと考える。
考えてゾッとする。
そして今健康で生きてることに感謝する。
今元気で充実した毎日を送れるのは、支えてくれた人たちや両親のおかげだし、本当に感謝している。
あのとき悪夢に溺れてしまった僕に手を差し伸べ必死に岸までたどり着かせてくれた。
今度は僕が飛び立って素晴らしい景色を見せてあげる番だ。
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